研究内容 

深発地震発生メカニズム

深発地震は,スラブの440 kmから660 kmの深さで発生します。 地球物理学的観測(例:Zhan et al.2014)や変形実験(例:Green and Burnley, 1989)により、かんらん石相転移断層メカニズムが深発地震発生の初期フェーズであると推定されています。 このメカニズムは、沈み込むスラブの中で準安定なかんらん石からの相転移によって形成された細粒なスピネル相(かんらん石の高密度相)にせん断不安定性が生じるというものです。 このせん断不安定性は粒径に依存するはずですが、これまでの研究では準安定オリビンの相転移断層メカニズムの粒径依存性については言及されていませんでした(例:Burnley et al.1991)。 そこで、私は様々な粒径のゲルマニウムかんらん石(天然のかんらん石とほぼ同じ物理化学性質をもち、より低圧で相転移する鉱物)の変形実験を行っています。

オリビンースピネル相転移のフェーズフィールドシミュレーション

かんらん石は上部マントルの主要な構成要素であり、その相転移は沈み込み帯のレオロジーに影響を与えます。 そのため、差応力下(沈み込み帯)でのかんらん石:オリビン→スピネル相転移のカイネティクスを明らかにすることは重要です。 しかしながら、天然に存在するかんらん石の変形実験を高圧下で行うことは技術的な問題のため困難です。そこで、実験の代わりにPhase Field法を用いてシミュレーションを行いました。 この手法は、複雑な組織を簡単にシミュレーションすることができます。

圧力誘起蛇紋岩化作用

蛇紋石は含水鉱物であり、その脱水はマントルの含水や火山弧の形成に影響を与えるため、沈み込み帯における流体移動を理解する上で重要です。 しかし、海洋リソスフィアに浸透した水の量はまだよくわかっていないため、蛇紋石の一種であるアンチゴライトの量も同様に不確かです。 少量の水でアンチゴライトが形成されるかどうかを明らかにするために、ゲルマニウムかんらん石に少量の水を加えて変形実験を行いました。 結果、600 ℃以下の温度で変形させた試料では広くアンチゴライトが形成されていました。 このように、海洋リソスフェア中で部分的に水和したかんらん石は、沈み込みによって生じたひずみによって、わずかな水と反応して蛇紋石になる可能性があります。